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ちゃと・まっし~ぐ~ら~!

「深夜特急」 沢木耕太郎

言わずと知れた、旅バイブル。
過去に日テレで放映された猿岩石のテレビ紀行は、このプロデューサーがこの本にいたく共鳴して企画されたもの。

当時、まだ日本にいた私は会社の先輩からこの本を紹介され、あっという間に読んでしまった。
その頃はハードカバーの1・2巻しかまだ出版されていず、3巻のヨーロッパ編は各章のタイトルだけ出来上がっているだけで、長い間出版されなかった。
そんなに毎日本屋に行っても、急に平台に並べられているわけはないのに、毎日本屋で今日か明日かと出版を待った。

私は沢木氏の景色の見方や人に対する感じ方や描き方がとても好きだったのだ。
この本の話を人とすると、中には「書き方のキザさがクサい」という感想を持っている人もあるが、私は大変素直にこの本を愛してきた。
沢木氏が旅行に出発した頃はまだ、各地のガイドブックも今のように出版されていなかった頃だし、ましてインターネットでいながらにして情報を集めるなどということもできなかった時代である。
何かの本を片手に、その本に書いてある情景を確認しながら旅行をするといったパラドキシカルな行為はまったくできなかったはずだ。
いわば、場当たり的な発想でアジアからインド、中近東そしてヨーロッパを1年半かけて辿った足跡の中には、きっとこの本にも書ききれなかった出会いもハプニングもあっただろう。
何せ、この本に書かれている事柄だけでもおそらくかなりの取捨選択がされたはずである。

・旅の始まりの興奮
・旅の途中でだんだんずるくなりかける自分にふと気づいた時の躊躇や落胆
・そして最後に、いったい自分はどこで、どのような形でこの旅を終わりとして納得するのかという疑問

すべてのフェイズは、人間それぞれの人生にもどこかであてはまると思う。
この本をどこでも読みたいというそれだけのために、ハードカバーを3巻揃えたほかに、文庫版6冊を2組も買ってしまっい、文庫版の1組をロンドンに持ってきた。
アジアに深くはまっていた頃の自分と、自分にとってはアウェイであるロンドンで毎日の生活にもがく今の自分と、いつか自分でピリオドを打って日本に帰ることになる自分の毎日もまた、一つの旅であることは確かだと思う。


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